層塔(そうとう)は、方形の塔身を複数重ねた多層式の石塔・木塔の総称です。三重・五重・七重・九重・十三重など、奇数の層(階)を積み上げ、各層に笠(屋根)を設ける構造が特徴です。古代インドのストゥーパを起源とし、中国を経て奈良時代に日本へ伝わりました。木造では東大寺・薬師寺などの大伽藍に、石造では鎌倉時代以降に寺院境内や旧街道沿いに建立されました。「十三重塔(じゅうさんじゅうとう)」は層塔の最高形式とされ、供養・追善の意味合いが特に強い石塔です。

名前の由来

「層(そう)」は「重なった階層」を意味し、「層塔」はそのまま「階層を重ねた塔」とうを意味です。「多重塔(たじゅうとう)」とも呼ばれ、層の数を頭につけて「三重塔(さんじゅうとう)」「五重塔(ごじゅうとう)」「十三重塔(じゅうさんじゅうとう)」などと表します。

英語では “stone pagoda” と表現されますが、「パゴダ(pagoda)」という語自体がサンスクリット語「ダーガバ(dāgaba)」=ストゥーパに由来しており、層塔がインドのストゥーパにまでさかのぼる歴史をそのまま反映しています。

歴史

起源——古代インドのストゥーパから

層塔の遠い祖先は、古代インドで仏陀の遺骨(舎利)を納めた半球形の塔「ストゥーパ(stūpa)」です。これが中国に伝わる際に、中国古来の楼閣建築と融合し、複数の層を積み上げた「楼閣式塔(ろうかくしきとう)」へと変化しました。この形が日本に伝わったものが層塔です。

奈良時代——木造大伽藍の象徴

日本には奈良時代(710〜794年)に本格的な仏教建築とともに層塔の形式が伝わりました。東大寺・薬師寺・元興寺・法隆寺など、奈良の大寺院に木造の三重塔・五重塔が建立され、都の景観を形成しました。

現存する木造層塔の最古例は奈良・法隆寺五重塔(607年創建・現存塔は7世紀後半)で、世界最古の木造建築の一つとして知られています。また奈良・薬師寺東塔(730年建立)は各層の間に「裳階(もこし)」という小さな屋根を加えた独特の形が有名です。

平安〜鎌倉時代——石造層塔の発展

石造の層塔は平安時代後期から鎌倉時代にかけて各地で造られるようになりました。花崗岩(御影石)・凝灰岩・砂岩などを使い、小型(高さ1〜3m)から大型(高さ5m超)まで多様な石造層塔が寺院境内・街道沿いに建立されました。

この時期に特に盛んに造られたのが十三重石塔です。十三という数は「十三仏(じゅうさんぶつ)」と対応するとも言われ、追善供養の象徴として重視されました。石工技術の発展とともに、精緻な笠の反りや格狭間(こうざま)の彫刻をほどこした名品が多く生まれました。

室町〜江戸時代

室町時代以降も石造層塔の建立は続きましたが、五輪塔・宝篋印塔の方が広く普及したため、新規建立の件数では劣りました。江戸時代には竿石型墓石が主流となり、石造層塔は主に寺院境内の記念碑的存在となっていきます。

層の数と意味

層塔の層数は必ず奇数です。これは陰陽思想において奇数(陽数)が吉数とされることによります。

種類特徴
三重塔(さんじゅうとう)最もシンプルな層塔。石造では小型のものが多く、個人墓や個人供養塔として建立される場合もある。
五重塔(ごじゅうとう)地・水・火・風・空の「五大(ごだい)」を象徴するとされる。木造では日本を代表する建築形式。石造五重塔も各地に遺る。
七重塔(しちじゅうとう)七仏(過去七仏)や七曜(日月火水木金土)と結びつける解釈がある。石造遺例は比較的少ない。
九重塔(くじゅうとう)九という数は「久(永遠)」に通じるとされ、長久の願いが込められる。石造では高さが増すため、石工の技術が特に求められる。
十三重塔(じゅうさんじゅうとう)石造層塔の最高形式。十三仏供養・追善の意味合いが強く、寺院の象徴的な供養塔として鎌倉時代から多く建立された。

十五重・十七重などさらに多層の石塔も存在しますが、十三重が最も一般的な最高形式とされます。

石造層塔の構造

石造層塔は上から下へ次のような部位で構成されています。五重塔を例に示します。

名称説明
相輪(そうりん)最頂部の飾り。露盤(ろばん)・伏鉢(ふくはち)・九輪(くりん)・水煙(すいえん)・宝珠(ほうじゅ)からなる。層が多いほど相輪も細長くなる。
各層の笠(かく そうの かさ)各層の屋根にあたる部材。先端に向けてゆるやかに反り、軒先が薄く削られて輪郭が美しく見える。層が上に行くほど小さくなる逓減(ていげん)が重要。
各層の塔身(かく そうの とうしん)各層の胴体部分。方形で、四面に仏龕(ぶつがん=仏像を安置するくぼみ)や格狭間を設けることがある。上層ぷど小さく逓減する。
基礎(きそ)方形の台座。複数の石を積む場合もある。側面に格狭間や蓮弁(れんぶ炓)の彫刻を施すものが多く、格式を示す。

逓減率(ていげんりつ):各層の笠と塔身は上層に向かって一定の割合で小さくなります。この割合(逓減率)が均等で美しいほど優れた石工の仕事とされ、鎌倉時代の名作石塔は逓減が非常に洗練されています。

代表的な石造層塔

名称・所在地層数・高さ時代・特徴
般若寺十三重石塔(奈良市)十三重・約14m鎌倉時代(1253年)。宋の石工・伊行末(いぎょうまつ)が建立に関与したとされる、日本最大級の石造層塔。国重要文化財。
興福寺十三重石塔(奈良市)十三重鎌倉〜南北朝時代。興福寺境内に現存する石造層塔。
浮図田十三重石塔(奈良県桜井市)十三重大神神社拝殿近くに立つ石造塔。中世の石工技術を今に伝える。
各地の街道石塔三重〜五重道標・辻堂として旧街道沿いに建立された小型の石造層塔。関東・近畿に多数残存。

他の石塔との違い

層塔五輪塔宝篋印塔宝塔
外観の特徴複数の方形層を積む形の異なる5石を積む方形塔身+隅飾り笠胴張り塔身+方形笠
最頂部相輪(細長い)宝珠相輪(短め)相輪
主な用途寺院の伽藍・追善供養個人墓・供養塔供養塔・境内塔寺院の記念塔・供養塔
見分け方層が重なって見える最上が丸い宝珠のみ笠の四隅に突起あり胴体が丸くふくらむ

よくある質問

層塔は墓石として使えますか?

三重塔・五重塔など小型の石造層塔は、個人墓・家墓の形式として建立できます。ただし一般的な竿石型墓石に比べて高さが出るため、墓地の区画や規定を事前に確認する必要があります。光徳石材ではご要望に応じて設計・ご提案します。

十三重塔と五輪塔はどちらが格が高いですか?

一概にどちらが上位とは言えません。五輪塔は宗派を問わず広く用いられた格式ある石塔で、鎌倉時代の武士や僧侶の供養塔にも使われました。十三重塔はより寺院的な意味合いが強く、大型の追善供養塔として建立されることが多い形式です。ご用途・宗派・ご予算に応じてご相談ください。

層塔の層は必ず奇数でなければなりませんか?

慣例として奇数(3・5・7・9・13層)が原則とされています。偶数層の石塔が存在しないわけではありませんが、歴史的に正統な形式は奇数層です。陽数(奇数)を吉数とする陰陽思想に基づくものです。

層塔の石材には何が使われますか?

花崗岩(御影石)が耐久性と加工性のバランスから最もよく使われます。古い石造層塔では地域の石材(奈良なら大和砂岩、関東では伊豆石・小松石など)が使われており、産地によって独特の風合いがあります。光徳石材では国内外の石材を取り扱っており、ご希望に合わせてご提案します。

「十三仏」と十三重塔の関係を教えてください。

十三仏とは、初七日から三十三回忌まで亡者は冥界では旅を導く13体の仏・菩薩の総称です(不動明王・釈迦如来・文殊菩薩など)。十三重塔はこの十三仏に対応するともされ、「十三の層が十三仏すべてに供養を捧げる」という解釈から、鎌倉時代以降に追善供養の塔として多く建立されました。


光徳石材は埼玉県を中心に石塔・供養塔の製作・建立を行っています。三重塔から十三重塔まで、ご用途・規模に応じた石造層塔の製作が可能です。ご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

名古屋の墓地と墓石の風景

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